現役塾講師の教育さまざまブログ

現役塾講師が日々思っていることを様々綴ります。

刀狩り、民撰議員設立建白書、十七条憲法・・・いろんな書き方ができてしまう社会科の用語

社会科で出てくる用語って、いろいろな書き方ができてしまうものがあります。

これ、生徒も困りますけど実は先生もけっこう採点などで困っていると思うんですよね。

 

1つは、送り仮名を付けても付けなくてもいいパターンです。

豊臣秀吉のやった「刀狩り」ですが、「刀狩り」と書いても「刀狩」と書いてもどちらもOKです。好きな方で書いてください。

徳川吉宗享保の改革で行った「上米の制」は「上げ米の制」もOKです。

 

もう1つは、「の」を入れても入れなくても良いパターン。

「上米の制」は「上米制」と書いても読みは「あげまいのせい」でどちらもOKです。

日本初の政党である自由党を立ち上げた板垣退助の「民撰議院設立の建白書」は「民撰議員設立建白書」と「の」を入れなくても正解です。

 

それから、漢字がいろいろ書けてしまうものがあります。

民撰議院設立建白書」の「撰」は「選」と書いても間違いではありません。常用漢字かそうでないかの違いです。ただし厳密には、「撰」は「作り上げる」の意味を含む、「選」は「多くの中から引き抜く・抜粋する」という微妙な違いが存在していたりします。基本的には「民撰議員設立建白書」は「撰」の字を使った方が良いかもしれません。「勅撰和歌集」なども「撰」の方が良いですかね。

阿倍仲麻呂」などの「麻呂」は「麿」でも大丈夫です。これは筆で縦書きのときに1字に見えるか2字に見えるかの違いです。でも学校の教科書では「麻呂」と2字に分ける方が主流になっているためそちらに合わせて覚えた方が良さそうではあります。

大阪城」は「大坂城」もOKです。江戸時代に「坂」の字が縁起が悪いと「阪」の字を推奨したのがきっかけですので、当時の書き方で「坂」の字でも良いことになります。ただし「大阪府」は固有名詞でそれが現在の正式名称ですから、「坂」の字を使ってしまうと間違いの扱いになります。

 

最後に、用語そのものにいろいろな書き方がある場合です。

聖徳太子の「十七条憲法」は「憲法十七条」「十七条の憲法」でもどれでもOKです。

五箇条の御誓文」も「五箇条の誓文」というふうに「御」を書かない場合もあります。

 

それと番外編ですが、書く際は特に問題ありませんが読み方がいろいろというものもありますね。

佐渡島」は「さどがしま」「さどじま」どちらも正式です。

岩礁の岬が有名な神奈川県の「真鶴町」は、正式な呼称は「まなつるちょう」ですが地元の人々はみな「まなづるまち」と読んでおり、町が読み方をどっちに統一するか検討しているといいます。というか役場でさえ公式HPが正式ではない方の「まなづる」でURLを取得しています。

地名はけっこうこういうのありますよね。「~島」が「~しま・じま」「~とう」どちらもOKみたいな。

 

話を戻しますと。

こういうのって、頭の固い先生は必ずこれで書きなさい、と言ってしまうんですよね。でも実際はそんなことなくてどれも正解です。固有名詞っていうのが頭にあるとどうしても特定の書き方しか認めたくなくなってしまうのかもしれませんが、そこは柔らかく考えるべきところです。

ちなみに入試もそういうのは配慮して採点されますので安心してください。

 

こういうのって英語だってけっこうありますからね。

色を表す「color」という単語は実は「colour」と書いても正解ですし、旅行することを表す「travel」に「ing」をくっつけると「traveling」「travelling」とLを重ねても重ねなくてもどちらも正解です。

ぜひ先生たちには用語には柔軟に対応してもらいたいです。